故人を偲ぶ気持ちを形に 初めての盆提灯・お供え物の選び方と飾り方
夏の暑さが本格的になる頃、日本の大切な伝統行事の一つである「お盆」がやってきますね。お盆は、ご先祖様や大切な故人の魂がご自宅に帰ってくるとされる期間。久しぶりに再会する故人をお迎えし、心を込めて供養する、日本人にとって特別な時間です。
特に、大切な方を亡くされて初めてお盆を迎える「新盆(にいぼん・しんぼん)」では、「何を準備したらいいんだろう?」「どうやって飾ればいいの?」と、戸惑うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、故人を偲ぶ気持ちを形にする、**盆提灯(ぼんぢょうちん)**やお供え物の選び方から飾り方までを、初めての方にも分かりやすく解説します。故人への感謝と、ご遺族の想いを大切にしたお盆を過ごすためのヒントを一緒に見ていきましょう。
お盆とは?故人を迎える大切な期間
お盆は、一般的に8月13日から16日までの4日間を指し、この期間に、ご先祖様や故人の魂が現世に戻ってくると言われています。ご家族やご親戚が集まり、故人を偲び、語り合うことで、絆を深める大切な機会でもあります。
特に、故人が亡くなられて四十九日の忌明け後、初めて迎えるお盆を「新盆(にいぼん/しんぼん)」と呼び、通常のお盆よりも丁重にお迎えする風習があります。
故人を導く光 盆提灯の選び方と飾り方
盆提灯は、故人の魂が迷うことなく自宅にたどり着けるよう、目印となる明かりを灯す大切な役割があります。新盆では、特に白い提灯を飾るのが一般的です。
盆提灯の種類と選び方
盆提灯には様々な種類がありますが、初めて選ぶ際に知っておきたい主なタイプをご紹介します。
白提灯(しろぢょうちん):
特徴: 新盆の際にのみ飾る、白一色の提灯です。清らかさを表し、故人の魂が初めて家に戻る道しるべとなります。
選び方: 一対で飾るのが正式ですが、住宅事情に合わせて一つだけでも構いません。新盆が終わったら、感謝の気持ちを込めてお焚き上げをするか、菩提寺に納めるのが一般的です。
絵柄入り提灯(えがらはいりぢょうちん):
特徴: 菊や桔梗、蓮などの美しい絵柄が描かれた提灯で、新盆以降、毎年お盆に飾ります。故人を供養する気持ちを表します。
種類:
大内行灯(おおうちあんどん): 据え置き型で、安定感があり、仏間やリビングに置くことが多いです。高さのあるものからコンパクトなものまで様々です。
御殿丸(ごてんまる): 円筒形や球形で、吊り下げるタイプです。場所を取らず、モダンな仏壇にも合わせやすいデザインが多いです。
住吉提灯(すみよしぢょうちん): 細身の筒型で、吊り下げるタイプ。より省スペースで飾れます。
霊前灯(れいぜんとう): 小型で、現代の住宅事情に合わせて作られた、卓上に置けるコンパクトな提灯です。
盆提灯を贈る場合のマナー
盆提灯は、故人と親しかった友人や親戚が贈ることも多いです。
贈る際は、事前にご遺族に連絡し、必要かどうか、またスペースの有無などを確認すると親切です。
「御仏前」「御供」「初盆御見舞」などの表書きで贈ります。
盆提灯の飾り方
飾る場所: 仏壇の脇や、盆棚(精霊棚)の近くに飾ります。スペースがあれば、左右対称に一対で飾るのが理想的です。
時期: お盆の入りである8月13日(または7月13日)の夕方には飾って明かりを灯し始めます。お盆明けの8月16日(または7月16日)の送り火が終わったら片付けます。
安全性: 火を使うロウソクタイプと、電気コードや電池式のタイプがあります。火の取り扱いには十分注意し、安全な電気式を選ぶ家庭も増えています。
故人への感謝を込めて お供え物の選び方と飾り方
お供え物は、故人への感謝の気持ちや、「一緒に食事をしたい」という心を形にするものです。故人が好きだったものや、日持ちのするものを選ぶのがポイントです。
お供え物の種類と選び方
食べ物:
故人の好物: 生前、故人が好きだったお菓子、果物、飲み物などをお供えするのは、故人を偲ぶ気持ちが伝わりやすいでしょう。
日持ちするもの: 夏場なので、傷みにくいものがおすすめです。個包装のお菓子やゼリー、缶詰、乾物などが良いでしょう。
分けやすいもの: ご家族や弔問客で分けやすいように、個包装されているものが便利です。
初物(はつもの): その年に初めて収穫された野菜や果物をお供えするのも良いとされています。
飲み物:
故人が好きだったお茶、ジュース、コーヒー、お酒など。未開封のものを選びましょう。
線香・ロウソク:
故人を偲び、仏壇を清める役割があります。香りや煙の少ないタイプもあります。
生花:
故人が好きだった花や、菊、リンドウ、ホオズキなど、仏花として一般的なものが良いでしょう。トゲのあるバラや、香りの強いユリなどは避けることが多いです。仏壇の両脇に対で飾るのが一般的です。
お供え物の飾り方
飾る場所: 仏壇の前に置く経机(きょうづくえ)や、盆棚(精霊棚)に飾ります。
並べ方: 基本的には、仏壇から見て手前に食べ物や飲み物、奥に花や線香立てなどを配置します。
心がけ: お供え物は、毎日新しいものに替えるのが理想的ですが、難しい場合は日持ちするものを中心に。痛む前に下げるなど、衛生面にも配慮しましょう。
新盆を迎えるにあたっての心得
無理はしない: 新盆は、ただでさえ心身ともに大変な時期です。全ての準備を完璧にこなそうとせず、できる範囲で心を込めて行うことが何よりも大切です。
ご家族で話し合う: 準備の負担を一人で抱え込まず、ご家族で協力し、話し合いながら進めましょう。
地域の風習を確認する: お盆の習慣は地域によって異なります。不安な場合は、ご親戚や菩提寺に相談してみるのも良いでしょう。
故人を偲ぶ気持ちを大切に: 形式にとらわれすぎず、故人を想い、感謝の気持ちを伝えることが、一番の供養になります。
まとめ:故人を想う温かい気持ちが何よりの供養
初めてのお盆は、分からないことや戸惑うことも多いかもしれません。しかし、盆提灯やお供え物は、故人への「ありがとう」や「また会いたい」という温かい気持ちを形にする大切な手段です。
この記事でご紹介した内容が、故人を偲び、心穏やかなお盆を過ごすための一助となれば幸いです。大切な方を思いながら、ご家族でゆっくりと故人をお迎えする準備を進めてくださいね。